敷地内同居って?

親の土地の敷地内に、親世帯の家と息子世帯の家が別にある状態。

これ、「敷地内同居」(あるいは「敷地内別居」)って言うそうです。

これまで離婚の案件を多く手掛けてきましたが、敷地内同居の夫婦の方も多くいらっしゃいました。

一見、「義両親と完全同居」の方が、姑との関係悪化などが原因で離婚に至りやすいように感じます。

しかし、正確に数えていませんが、完全同居よりも敷地内同居の方が、むしろ相談件数は多いと感じます。

特に岐阜のような地方では、親が広い敷地を所有している場合が多いからでしょう。

また、恐らく今の時代、「さすがに両親との完全同居は無理だろう」と考える夫や夫の両親が多い、というのもあるでしょう。

敷地内同居はいいことばかり?

息子(夫)から見れば、敷地内に家を建てれば、土地代はタダ。家は別なのでプライバシーは保たれます。

一方親からみれば、息子夫婦がすぐそばにいれば何かあった時に安心ですし、いつでも孫の顔も見られます。

しかし、いくら家が別とはいえ、妻側からすると、結構ストレスになることもあります。

例えば、外出時や帰宅時には気配を感じるので気を遣います。家に友人を呼ぶのも、なんだか気が引けます。ひどい場合は、親が勝手に家にあがっていることもあります。

敷地内は全員親族で自分だけが他人という環境・・・。

言い方は悪いのですが、何だか常に見られているような気分になります。

同居?別居?

確かに、親と同居かというとそうではありません。かといって、別居かと言われるとそれも微妙。

この、どっちつかずの状態が、まさに夫婦間の認識のズレを生じさせるのです。

妻の気持ちに夫は気づかない

こういった細かいストレスに夫は気づきにくい。気づかないどころか、「せっかく家を別々にしてやったのに何の不満があるんだ?」などと、敷地内同居にしたことをまるで恩に着せるような言動を取ることすらある。

こうなるともう、夫婦間のズレは決定的になってしまいます。

妻の気持ちが一気に爆発して、離婚という事態になってしまいます。

敷地内同居の夫婦が離婚するときの、よくある問題点

では、敷地内同居の夫婦の離婚では、どのようなことが問題となるのでしょうか。

1.離婚することに夫が納得できない

なぜ離婚を迫られるのか、夫の側が理解できないことが多いのです。

「妻のためと思って」、別々の家にしてあげたと思っているのですから。

だから、何が不満だったのかと、夫の両親と一緒になって責める人もいます。

そのため、離婚調停をしても感情的対立が激しく、長期化しやすいです。

2.お子さんの親権で揉めることが多い

例えば、夫の浮気や暴力、といった理由での離婚の場合は、最初から夫は親権を諦めている方が多いです。自分が悪いと、ある程度自覚していますから。

しかし、敷地内同居の場合、明確に問題がある夫は少ないです。むしろ、子育てに協力的な方も多いです。

そうすると、「離婚は仕方ないとしても、なぜ子どもと離れなくてはならないのか」という気持ちになるのも無理はありません。

そのため、親権問題が長期化することも多いのです。

3.家の住宅ローンの問題が残る

夫婦で住んでいた家は多くの場合、住宅ローンが残っています。その上、土地は親名義で権利関係が複雑。おまけに、同一敷地内に親の家が建っているので、夫婦の家だけ売りたくても売るのは困難。

そうすると、結局、夫がローンを支払い続けるしかない、という結論になってしまいます。

ほんとは理想的なんですが

家族間の関係が希薄化している現代において、親の敷地内に息子夫婦が住むという形態は、理想的です。

関係がうまくいっていれば、何も言うことはありません。

しかし、いったん関係が悪化すると、普通の離婚以上に、問題が複雑化することが多いです。

こんなことがありました

私が以前、夫の代理人をした離婚事件でのことです。離婚後に妻が荷物を引き取る際に、双方の代理人弁護士が立ち会うこととなりました。

親の敷地内に建てた家なので、大変大きな家でした。まだ小さいお子さんも3人いました。

夫があらかじめまとめておいた荷物を、妻と子が運び出していきました。30分もかかりませんでした。

荷物を運び出した後の家には、夫がただ一人。ガラーンとした物悲しい雰囲気でした。

こんな経験はしたくありませんね、と、妻側の弁護士と話しながら見守ったものでした。

夫の心構え

今、敷地内同居をしている方、特に夫は、何があっても妻の味方をするという覚悟を持って下さい。

自分が思うほど、妻は喜んで敷地内同居をしているわけではないのです。

そして、「安い資金でマイホームを建ててやった」とか、「親にも感謝して欲しい」などという気持ちを表に出さないようにして下さい(本当は思ってもダメですけどね)。

そうすれば、長続きします。

妻は

一方、「ああ、わかるわ」と感じた妻の方。夫に早く自分の思いをぶつけて下さい。言わない限り、夫は気づいていません。

それでも、「もうダメだな」と感じたら。

その時は、もう遅いのかもしれません。悲しいことですが。

 

なお、当事務所では、敷地内同居の方の離婚のご相談も多数お聞きしています

(岐阜市・各務原市・羽島市・関市・笠松町・岐南町・一宮市・江南市など)

 

岐阜みなみ法律事務所