離婚時の財産分与

離婚する際には、婚姻中に夫婦が共同して築いた財産を分け合う「財産分与」を求めることができます。

名義のいかんに関わらず、基本的に夫婦共有財産の2分の1を取得することが可能です。

財産分与を適切に行うことは、離婚後の生活費を確保するためにも大切なことです。しかし、協議離婚の場合には財産分与をしていなかったり、公平に行われていないことが多いようです。

ここでは、財産分与の基本的なルールや注意点をご紹介します。

財産分与とは

財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同して築いた財産を離婚時に分け合うことをいいます。

夫婦はお互いに協力し合って生活していますので、財産も2人の協力によって築かれたものといえます。その財産を離婚時に公平に分け合うための制度が、財産分与です。

財産分与の基本的なルール

財産分与の基本的なルールとして、以下の点を押さえておきましょう。

2分の1ずつの分与が原則

財産を何割ずつ分け合うかが問題となり得ますが、原則として2分の1ずつに分け合います。

正確に言うと、財産の維持・形成に貢献した度合いに応じて分け合うことになりますが、基本的に夫婦それぞれの貢献度は同じと考えられるからです。

専業主婦の方でも、2分の1の財産を取得できます。

ただし、夫婦の一方が会社経営者や医師などで、特別な才能や努力によって高額の財産を築いたことが明らかな場合には、2分の1とならないこともあります。

対象となる財産

預貯金や不動産、自動車などの動産、株式などの有価証券、保険をはじめとして、金銭的価値のあるものはすべて財産分与の対象となります。

退職金も、5年~10年以内に退職の予定がある場合には財産分与の対象となることがあります。

ただし、財産分与はプラスの財産がある場合に分け合う制度ですので、借金を抱えていて全体的にマイナスとなる場合は分与を請求できないこともあります。

名義のいかんは問わない

婚姻中に夫婦が取得した財産は、名義のいかんを問わず財産分与の対象となります。どちらかの単独名義で取得した財産であっても、夫婦が協力して得たものと考えられるからです。

夫が外で働いて給料をもらえるのは、妻が家事労働でサポートしているからこそです。財産分与では妻の家事労働も正当に評価されます。

特有財産は分与できない

夫婦のどちらかが結婚前から持っていた財産や、婚姻中でも贈与や相続などで得た財産は「特有財産」となり、財産分与の対象とはなりません。

特有財産は、夫婦が協力し合って得たものではないからです。

ただし、もともとは特有財産でも、それを維持するために貢献した場合には分与が認められることもあります。

離婚原因とは無関係

財産分与は、夫婦のどちらが離婚原因を作ったのかとは無関係に請求できます。婚姻中に協力し合って財産を築いてきたことと、離婚原因とは関係がないからです。

性格の不一致で離婚する場合はもちろんのこと、たとえ、あなたが不倫して離婚する場合であっても、財産分与は請求可能です。

住宅ローンがある場合の財産分与

離婚時にマイホームの住宅ローンが残っている場合は、注意が必要です。住宅を売却するにせよ、どちらかが住み続けるにせよ、公平な処理を行わなければなりません。

住宅を売却する場合

アンダーローンの場合は売買代金が手に入りますので、それを公平に分け合います。

オーバーローンの場合は住宅ローンが残るため、債務を分け合うことになります。支払いが難しい場合には、債務を負わない代わりに慰謝料や養育費を減額するなどの交渉が必要となることもあります。

どちらかが住み続ける場合

離婚後に夫が住宅に住み続け、夫名義の住宅ローンをそのまま支払い続けるというのが最も多いパターンです。

この場合も、アンダーローンがオーバーローンかによって超過分または不足分を現金で精算するのが原則です。

実際には精算していないケースが多いですが、アンダーローンの場合には妻が損をすることになるので注意が必要です。

また、妻が連帯保証人や連帯債務者となっている場合には、夫が住宅ローンの返済を怠ると妻が請求を受けてしまいます。できる限り、保証人の変更や借り換えなどをしておきましょう。

妻と子どもが住宅に住み続けて、夫が住宅ローンを支払い続けるというパターンもあります。

この場合も、夫が住宅ローンの返済を怠り、妻も返済できなければ住宅が競売にかけられる可能性があります。

このようなリスクも頭に入れて、住宅を売却するのか、どちらかが住み続けるのかを話し合うことが大切です。

財産分与の注意点

その他にも、財産分与を求める際には以下の点に注意が必要です。

財産をどのように評価するか

預貯金は額面によって価値が明らかですが、不動産や自動車などその他の財産については、それをいくらと評価するのかが問題となります。

財産の評価は夫婦間の話し合いで自由に決めてよいのですが、「時価」を基準とするのが公平といえます。

不動産について「固定資産評価額」を基準として考える方もいますが、固定資産評価額は時価よりも低いことが多いので、注意が必要です。

財産隠しがないか

財産分与を公平に行うには、お互いがすべての財産を開示し合うことが前提となります。

しかし、夫婦といえども相手の財産を正確に知らないことも多いものです。妻が財産分与を求めると、夫が財産隠しをすることもよくあります。

財産を隠されたままでは、取り分が本来よりも少なくなってしまいます。

話し合いが進まないことも多い

財産分与は基本的に夫婦間の話し合いで決めるものですが、話し合いがうまく進まないことも少なくありません。

夫は「俺が働いて得た財産は俺のもの」と考えることが多いですし、感情的に対立して冷静に話し合えないこともあるでしょう。夫からDVやモラハラを受けていて、恐怖心のために強く求められないこともあると思います。

そんなときには調停や審判、訴訟で解決することもできますが、手間と労力がかかってしまいます。

離婚時の財産分与は弁護士に相談を

財産分与で困ったときは、弁護士に相談することをおすすめします。

どれくらいの財産を取得できるのかを的確に判断してもらえます。相手が財産隠しをしていても、弁護士から開示を求めれば開示してくる可能性があります。法的手段を使って財産調査をすることも可能です。

相手方との話し合いは弁護士が代行しますし、調停や審判、訴訟が必要となった場合も専門的なサポートが受けられます。

当事務所では、財産分与をはじめとする離婚問題で豊富な解決実績があります。相談だけでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

岐阜みなみ法律事務所