婚姻費用~別居中の生活費をもらう方法~

夫婦は別居中でも「婚姻費用」という名目で生活費を分担して負担しなければなりません。多くの場合、妻から夫に対して婚姻費用の請求が可能です。

ここでは、婚姻費用についてわかりやすくご説明します。

婚姻費用とは

婚姻費用とは、わかりやすくいうと婚姻中の夫婦の生活費のことです。

夫婦はお互いに助け合って生活していかなければならないという義務を負っていますので、生活費もそれぞれの収入や資産などに応じて分担しなければなりません。この義務は、法律上の夫婦である限り続くものと法律で定められています。

そのため、たとえ離婚に向けて別居中であっても、収入の低い方から高い方に対して婚姻費用の支払いを請求できるのです。

日常の衣食住に必要な費用や子育てにかかる費用、医療費などの他にも、交際費や娯楽費についても、その家庭の収入や資産、社会的地位に見合った範囲内の金額が婚姻費用に含まれます。

婚姻費用の金額は?

婚姻費用の金額は、夫婦間の話し合いで合意すれば自由に決めることができます。一般的には、裁判所の「婚姻費用算定表」を参照して決められます。

婚姻費用算定表には、子どもの人数と年齢、夫婦それぞれの収入に応じて目安となる金額が掲載されています。

一例として、10歳と7歳の子どもがいる場合で、夫の年収が500万円、妻の年収が150万円だとすると、婚姻費用の目安は1ヶ月あたり10万~12万円とされています。

算定表では、離婚後に親権者が非親権者に請求できる「養育費」よりも「婚姻費用」の方が高い金額となっています。

これは、「養育費」は子育てにかかる費用に限られるのに対して、「婚姻費用」は請求する人の生活費も含まれることによります。

婚姻費用はいつからいつまでももらえる?

婚姻費用は法律上の夫婦である限り負担しなければならないものですので、理論上は結婚してから離婚するまで請求することができます。

ただ、同居中は自然に生活品負担を分担しているのが通常です。そのため、別居開始から離婚が成立するまで、または別居を解消して同居を再開するまでの間、請求するのが一般的となっています。

過去の婚姻費用ももらえる?

婚姻費用の請求をお考えの方の中には、すでに別居を開始しているという方もいらっしゃることでしょう。

別居開始から今までの分の婚姻費用を払ってもらえるかというと、残念ながら請求していなかった場合は難しいです。

婚姻費用を請求していないということは、払ってもらわなくても生活ができていたと考えられるからです。

そのため、実際に請求する前の婚姻費用は請求できないのが原則です。ただし、夫婦間の話し合いで合意することによって、過去の婚姻費用を払ってもらえることもあります。

なお、請求する際には請求したという証拠を残すことが重要です。内容証明郵便で「婚姻費用分担請求書」を送るか、家庭裁判所へ「婚姻費用分担請求調停」を申し立てることが必要となります。

婚姻費用をもらえない場合

以下のようなケースでは、例外的に婚姻費用の請求が認められないことがあります。

・勝手に家を出た場合
・自分が別居の原因を作った場合
・相手に支払い能力がない場合

夫婦は原則として同居しなければならないという義務も負っています。そのため、勝手に家を出た場合や、自分が不倫などをして別居した場合にまで婚姻費用を請求することは権利の濫用として認められないのです。

また、相手が失業中などで無収入の場合は、資産がある場合は別として支払不能ですので請求しても払ってもらえません。

婚姻費用を請求する方法

婚姻費用を払ってもらうためには、まずは夫婦で話し合いをすることです。請求したときからしか払ってもらえませんので、できる限り、別居開始前に毎月の金額と支払日を取り決めておいた方がよいでしょう。

話し合いがまとまらない場合は、婚姻費用分担請求調停を申し立てます。家庭裁判所で調停委員を介して話し合って決めることになります。

離婚調停を申し立てる場合も、婚姻費用分担請求調停は別途申し立てる必要があります。

調停でも決まらないときは、自動的に審判の手続に移行し、家庭裁判所が妥当と考える金額の支払いを相手に命じることになります。

適切な金額を払ってもらうためには、相手の収入や資産を明らかにすることが必要不可欠です。できる限り、同居中に相手の収入や資産を把握して、証拠資料を確保しておきましょう。

婚姻費用をすぐに払ってほしいときの対処法

婚姻費用分担請求調停は通常1~2回の期日で終了しますが、それでも申立てから終了まで数ヶ月ほどかかります。なかなか合意できないときには半年ほどかかるケースもあります。

その間の生活費に窮しそうな場合には、次のいずれかの手続きをとることで、早期に裁判所から相手へ婚姻費用の支払いを命じてくれる可能性があります。

・調停前の仮処分
・審判前の保全処分

どちらも、婚姻費用分担請求調停の申立てと同時に申し立てることができます。審判前の保全処分の方が強制執行が可能というメリットがありますが、その分、緊急性などの要件が減額に判断されます。

申立ての手続きは少し複雑ですので、お早めに弁護士に相談されることをおすすめします。

婚姻費用で困ったら弁護士に相談を

相手が婚姻費用を任意に支払ってくれればよいのですが、話し合いが進まなければいつまで経っても払ってもらえないことになりかねません。

正式な請求手続きをとってからしか払ってもらえないという問題もありますので、困ったときはお早めに弁護士への相談を検討された方がよいでしょう。

当事務所では、適正な金額の婚姻費用を早期に獲得した実績も豊富にございます。おひとりで悩まず、お気軽にご相談ください。

岐阜みなみ法律事務所