夫と別居したい その前に
離婚に向けて別居を考えている方へ
離婚する!と、いったん決意を固めた場合、特に女性の場合は揺るがない方が多い印象を受けます。
それまでに蓄積された思いが限界に達しているのですから、無理もありません。
そして多くの場合、離婚に向けてまず、別居を検討する方も多いでしょう。
では、別居の際、何を決めたらいいのでしょう。
1.別居先を決める。
まずは別居先を確保しなければなりません。以下のような場所が候補となります
①実家に戻る
実家のある方なら実家に戻るのがいいでしょう。生活費の心配はなく、お子さんの面倒もみてもらえるので安心です。
ただ、実家に既に兄弟家族が住んでいるとか、実家との折り合いが悪いとか、実家が遠隔地過ぎて戻れないという方もいらっしゃるでしょう。
それでも生活費のことを考えたら実家が一番いいとは思いますが、難しい方は「実家」という選択肢は外すしかないですよね。
ちなみに、実家が遠方の場合、離婚調停を申し立てる際に家庭裁判所が遠くなる可能性はあります。離婚調停は、「相手の住所地」を管轄する裁判所に起こさなくてはならないからです。
その場合、弁護士が代理人に就いている場合は、裁判所まで行かずに、弁護士事務所の電話を使って調停をすることもできます。詳しくは弁護士に聞いてみて下さい。
②アパートを借りる
実家に戻れない場合は、賃貸住宅を捜すしかありません。
不動産やさんを訪ねるか、賃貸物件を扱うサイトで調べて、初期費用としていくらかかるか調べましょう。
ちなみに調停を申し立てる際、申立書にアパートの住所を記載したくない場合は、もとの住所を記載しても大丈夫です。
2.生活費のメドをたてる
引っ越し費用、家賃、当面の生活費等にいくらくらいかかるか、シュミレーションしておきましょう。
別居してすぐに婚姻費用の調停申立をすれば、申立時からの婚姻費用(生活費)は支払われますが、裁判所で婚姻費用が決まるまでは数か月かかることが多いです。
ですから、アパートに転居する場合は、ある程度まとまったお金は必要になります。
その場合は、家からある程度持ち出すこともやむを得ません。ただし、持ち出したお金は、離婚時に財産分与を決めるうえで考慮しなくてはなりません(飽くまでも緊急避難的措置ですので)。
例えば財産分与額が200万円だとして、別居時に50万円持ち出していたら、その分は引くということです(財産分与の前払いをしてもらったと考えるのです)。
3.お子さんの学校・幼稚園のことも考える
お子さんを家に残して別居するのは心配。だから子どもも連れて行く。そういう方は多いかと思います。
ただ、急に生活を変更させられて、友達とも会えなくなってしまうお子さんの気持ちも考えてあげて下さい。学年が変わる時期に引っ越すとか、せめて学期が終了する時期まで待ってあげてもいいかな、と思います。
どうしてもお子さんが巻き込まれてしまうのが離婚の辛いところですので、連れて行くにしても、時期は考えてあげた方がいいかと思います。
もちろん、夫からのDVなどがひどくて、一刻も早く家を出たいという場合は仕方ありません。
なお、夫に黙ってお子さんを連れて行くと、夫の怒りが大きくなることは多いです。
子どもに関心の薄い夫であれば別ですが、逆にお子さんへの思いが強い方だと、場合によっては、即座に「子の引き渡し」「監護権者指定」の仮処分や審判を裁判所に申し立てられるかもしれません。そういう可能性もあるということは、少し頭に入れておくといいでしょう。
4.引っ越しの日を決める
エックスデー(転居日)が決まったら、いよいよ引っ越しです。
①引っ越し業者に頼む
荷物が多い場合や自力での引っ越しが難しい場合、引っ越し業者に依頼しましょう。
ただし業者に頼むときには、すぐに予約を取れない可能性があります。特に引っ越しシーズンには「1~2ヶ月間は予約が埋まっている」などといわれる可能性もあるので、早めに日にちを 押さえておきましょう。できれば相見積もりをとって、費用を抑えましょう。
②友人や親族に手伝ってもらう
引っ越し業者に依頼せず自力で移動する方もおられます。
1人では難しければ、友人や親族に車を出してもらい、運べるだけの荷物を運んでもらいましょう。
③家財道具や電化製品の持ち出しは問題ない?
なお、家の家財道具は、厳密には夫婦共有財産ですので、勝手に持ち出すことはトラブルの元になるので避けた方がいいでしょう。
ですから、衣類や私物、家具や電化製品の中でも高額とまではいえない物(古くて財産価値の低い物)など、最低限必要な物に限定して持ち出すのが無難かと思います。
5.離婚交渉(調停・裁判)に必要な書類はとっておく。
いったん別居すると、離婚に必要な資料を集めるのが困難となることがあります。例えば、夫名義の通帳の残高や履歴などは、夫が出してくれれば問題ないですが、意地悪で出してくれないとか、隠すということもあります。その場合、妻が開示請求するのに余計な手間がかかります(基本的には裁判所を通さないといけません)。
ですから、以下の資料のコピーをとっておくといいでしょう。
①夫名義の預貯金通帳、
②生命保険証券
③勤務先の財形・積立金資料
④証券会社名や口座内容がわかるもの
仮にコピーが難しい場合でも、銀行・支店名、生命保険会社などは正確に把握にしておくべきです。
6.いろいろ考えすぎない
ここまでいろいろ書いてきて、矛盾するかもしれませんが、あまり深く考えすぎないことも大事です。
特に、モラハラやDVに悩んでいる方など、夫に対して弱い立場でいる女性は、もともと真面目な方が多いです。
「自分がもっと我慢すればいいのじゃないか」「この程度では離婚できないのではないか」「子どもがかわいそうではないか」「夫にもっとひどいことを言われるのではないか」「親に迷惑を掛けるのではないか」など、いろいろと考えてしまいます。
さらに言えば、暴力やモラハラの被害者であるにも関わらず、「自分が被害者である」と認識できていないケースも少なくありません。
ここまでくると、夫からの一種のマインドコントロールです。早く周囲の人や弁護士などに相談をして、自分が被害者である自覚を持ちましょう。
感情的になって家を飛び出すのもよくありませんが、考えすぎて自分の精神が壊されていくのは、もっといけません。